2015年度入試から行列の問題が出せません。よって、2015年度から行列をしらない学生が入ってきますので、計算機科学系の学科の先生は「誰が最初に教えるんだ!?」という重要案件に取り組む必要があります。
2012年度から高校数学の数Cが消えて高校では行列を学ばなくなる - 発声練習
行列と言っても待ち行列(queue)ではなく,数字を縦やら横やらに並べたマトリックス(matrix)のことである.
我々がふだん「数」だと思っている実数は,実のところ宇宙の法則(と呼ぶべきか人間の思考原理と呼ぶべきか)を表現するにはいささか表現力が足りないのである.例えば,実数だけでは数直線上の点と移動しか表せない.自乗すれば-1になる数も表せない.断っておくが-1は実数だ.つまり,計算(べき乗というわりとありがちな計算)の結果が実数になるような「数」が実数で表現できないのだ.
複素数(complex)は実数に対する空前絶後の拡張で,この宇宙のあらかたのコンセプトは複素数で表現出来るぐらいに強力である.その存在は詩的ですらあり,複素数についにギリシア人が見つけられなかった神を見出すものさえいる.
しかし,しかしなのだ.
複素数とて万能ではない.複素数は神々しくも美しいが,複素数を拡張する試みはどれも無残な最後を遂げている.実数の今一つの拡張は行列(matrix)である.行列は複素数に比べると,実に泥臭い.ところが,この場当たり的な拡張はどうやら数の本質らしいのである.例えば,複素数は行列で表現する事ができる.スピノルという,到底信じがたい性質を持つ量さえも,行列で表現できる.
つまり,こういうことだ.神様はどうも,複素数(complex)ではなく行列(matrix)を先にお作りになったらしい.行列は奇跡的にも実数を並べて書き表すことができるが,それは仮の姿である.行列は一般に大きさを持たないし,向きも持たない.およそ数学的美しさすなわちsimplicityを持ちあわせていなさそうに見える.しかし,多くの概念が行列というひとつの概念に収斂する.
この大切な概念である行列を,高校生に教えないというのは国家レベルの誤ちではないだろうか.
