「あるときスティーブがシリコンバレーの280号線という高速道路を越えたところにきれいな山があるから、いっしょにハイキングしようと言うんです。もともと彼はハイキングが好きなんだけど、1人だけだとつまらないからと他の人を誘っていた。日曜日の朝7時にスティーブの家の前に集まって、1時間半くらい山の中を歩いて、メンロパークのカルトレインの駅前にある『Cafe Borrone』で朝食をとる。トーストとスクランブルエッグ、ソーセージ、カフェラテ。で、10時くらいにスティーブとさよならするという感じでした。ちなみにCafe Borroneは今もありますよ」
「これがのちにSilicon Valley Sunday Morning Crazy Hiking Clubという名前が付くんですが、誘われた人はみんな最初の1回しか行かない。日曜日の朝7時にハイキングはきついし、やっぱり寝たいしね。でも、僕はそれにずーっと付き合った。で、歩いている間にMobileIPやIPv6の設計はなぜああなったのかなどという話を聞いていたんです」
こうしたハイキングでのディスカッションで生まれたのが、IPv6のScopeIDだ。IPv6のアドレスは、リンクローカルアドレスのあとに「%インターフェイス」が付けられる。この仕様もスティーブ氏と宮川さんが議論を繰り返し、日本でのWIDEの仲間、特に伝説的なKAMEプロジェクトの面々とも協力してRFCに持ち込まれた内容だという。
「あるときはIPv6でISPやるにはどういう設計がよいかということを具体的に検討していたんです。IPv4のPPPってアドレスを1つだけ渡して、NATで背後を接続する仕様だけど、IPv6ってエンドツーエンドの通信を保つため、NATはしてはいけない。だからPPPでIPアドレスを渡す以外に、あるアドレス空間をまとめてルーターに教えてあげる必要があるんです。それをスティーブに話して、議論を重ねた数週間後、Cafe Borroneで次のIETFでそれを提案してくれと言ってくれたんです」